野賀海水浴場 【大崎上島・船で行く施設充実静かな海】

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瀬戸内海では7番目の大きさを誇る広島県の大崎上島。近くには自転車や徒歩でも瀬戸内海の島を渡れる「しまなみ海道」や「とびしま海道」があるが大崎上島には到達していない。しかししまなみ海道途中の大三島などからは高速船に自転車を乗せて簡単に渡ることができる。かつては潮待ちの港として栄えた大三島には古いながらも立派な家屋がたくさん残る。のんびりと自転車で島を走るのも良い場所だ。そんな大三島でゆっくりと快適に静かな海水浴ができる楽しめるのが野賀海水浴場だ。

離島ながらも施設が充実した野賀海水浴場

大三島から高速船に乗ると、木江という大崎上島南西部の町に着く。造船所が点在するいかにも瀬戸内海の港町だが、かつては潮待ちの港として栄えた場所。古い立派な家屋が残る街並みは散策していてもとても楽しい。なお、高速船には自転車を乗せることもできるので、しまなみサイクリングの途中に立ち寄るのも良い。木上から海沿いの道を時計まわりに走る。小高くなった丘を越えると、目の前に気持ちの良さそうなビーチが現れる。ここが「野賀海水浴場」(きのえ海水浴場)だ。

「きのえ温泉ホテル清風館」という旅館への入口に海水浴場の入口もある。この道で下に下りた場所に数台、すぐ近くの広い路肩にも車を10台程停められる。勾配のきつい坂を降りていくと、そこには美しい青い海が待っていた。とても穏やかな海。静かなさざ波と時折それを切り裂くように響く船の走行音。瀬戸内海の美しい風景が目の前一面に広がった。とても気持ちよく、手を伸ばし深呼吸。もし今が真夏なら、一目散にこの青い海に飛び込む衝動に駆られていたに違いない。

きのえ海水浴場のビーチ。美しい白砂が敷き詰められたビーチは石なども少なく、裸足でも安全。波も穏やかで、深くもなく、子供連れでも安心。東屋にトイレ、シャワーもあり、これは海水浴場としてはとても快適だ。すぐ上の旅館「清風館」での日帰り温泉もあり、海水浴後に海を眺めならひとっ風呂も可能だ。このビーチのレベルは高いのに、離島なのでとても静かだ。

とても青くて美しい瀬戸内の海。実はこの島は祖母の故郷であり、私もこの浜で20年以上前に泳いだことがある。祖母から聞いた話だが、父を生む時に祖母はこの島に戻ってきていたそうだ。その時にこの海で泳いだと祖母は懐かしそうに話していたのを僕は覚えている。人間は確かに命を脈々と紡いでいくのだと僕は目の前に広がる母なる海を見ながら、そう感じた。

こんな立派な堤防は、僕が子供のころにはおそらくなかっただろう。しかしいくつもの島が重なるように浮かぶ風景は、瀬戸内海の風景であり、僕の子供のころの記憶と同じ風景だった。

そんな子供のころと変わらぬ風景の中に、絶対その時にはなかったものが。島と島を結ぶ巨大な橋が見える。四国と大島を結ぶ「来島海峡大橋」だ。瀬戸内海の島々をいくつもの島を橋で結び、愛媛・今治市と広島・尾道市を結ぶしまなみ海道の橋の中でも最長の橋。全長4kmを超えるの巨大な橋の姿は10数キロ離れたこの場所からでもはっきりと確認できる。このしまなみ海道の開通は、この瀬戸内海の暮らしを相当に大きく変えたといえるだろう。
それでもここから見る風景は、橋以外にには何も変わっていないように見える。波はほとんど立たない、穏やかな海。帯を引くように流れる瀬戸内海独特の早い潮流。何もかもが、何も変わらずに、ずっとここにとどまっているかのようだ。

瀬戸内海の中でも青くて透き通った海で泳げる

堤防から見る野賀海水浴場。青く透き通った水と、美しい砂のコントラストがとても見事。

きのえ海水浴場全貌。美しい水、きれいな砂浜、穏やかな海、絶好のロケーション、整った施設。言うことなしの海水浴場だ。だが、どの角度から見ても、この海のどこで遊んだのか、僕は思い出せずにいた。1日中、真黒になるまで泳いだ海。この島で一番濃い記憶がここに残っているはずなのに、その場所はいまだ見当たらない。

野賀海水浴には東側にももうひとつのビーチがある。どちらかというと、こちらの方が原始的な感じだ。が、ここでついに、僕の記憶がフラッシュバックする場所があった。写真左側の岩場。ここだ。間違いない。僕がよく魚を追いかけて張り付いていた岩場。こんな護岸され、遊歩道もなかったが、形も、水深もビーチからの距離も記憶にぴったりだ。

ふと見上げると、その岩場の上には「清風館」の建物がそびえる。鮮明ではないが、この海の上に大きな建物があった記憶は今も残っている。ここだ。僕が子供の頃に遊んだ海は、ここで間違いない。当時の「国民宿舎きのえ」は「清風館」と名前を変え、海岸は立派に整備されたが、そこは確かに僕が遊んだ海だった。 きのえ温泉ホテル清風館では海を見ながらの素敵なリニューアルされた素敵な客室で海を見ながらの滞在が楽しめる。海水浴の宿としてはもってこい。また海を見下ろしながら浸かれる露天風呂は大人気で、海水浴の後の日帰り温泉でももってこい。

キャンプやシュノーケリングも楽しめるアウトドア派ビーチ

さっそくよく遊んだ岩場に行ってみる。見下ろしてみると、浅い砂地の上に小さな魚が少しだが遊んでいた。よくこんな1箇所で何時間も張り付いて遊んでいたなぁと、子供のころの自分を苦笑い。最近では高知の柏島によくシュノーケルに行く。ここよりもっと透明な海で、カラフルで大きな魚を求めて、深くまで潜る僕。大人になって、相当に目が肥えたとか、贅沢になったもんだと思うが、今の僕の海好きの原点は確かにここだった。ここで魚を求めて、何度も何度も海の中に潜った僕。大人になっても、大してやっていることは変わらない。

北側のビーチにはキャンプができるようになっている。かまどと炊事場がある。水が出るかどうかは確かめなかったが、施設としては無料のキャンプ場として利用できるようだ。
そういえば、この海で子供の頃に一度キャンプをしたことがあったが、それはここだったのかな。

海の上を鷺が悠々と飛んで行った。島が寄り添うこの海域。渡り鳥でなくても、鳥は島を自由に飛び交っている。「鳥」と「島」。とても似ているこの漢字は、まさにこの瀬戸内海の海域で生まれたのではないか、そう思ったりもする。

海水浴場の東の端は、荒々しい島の風景になっている。どちらかというと、大人になった僕は、こんな海でシュノーケリングをする方が楽しい。美しい島の風景はとても気持ちがいい。

瀬戸内海の表情は、この穏やかな海だけではない。この海を休みなく行き来する多くの船だ。島の間を縫って行くので、大型船でも陸の近くを運行するので、その姿には時々びっくりさせられる。そして、その大きさだけでなく、滅多に見ない特殊な船も通る。一隻のタグボートが、何やら興味津津な物体を曳航してきた。

海水浴場の沖合をかすめるように曳航される巨大な船。いや、船というよりも、船の形をした「何か」だ。これは何だろう。船の上に小さな町や工場があるみたいだ。よく見ると何かの橋を作るような超巨大なパーツが乗っかっているようにも見える。どこでどんな作業に使う船なんだろう。美しい風景の中に、時々通る船を楽しむ。それがこの海で過ごす楽しい時間だった。

野賀海水浴場

場所: 広島県豊田郡大崎上島町沖浦
電話: 0846-65-3120(大崎上島町商工観光課)
期間: 7月第3土曜日~8月31日
交通: 垂水 又は 白水から車で15分
シャワー: あり・無料
更衣室: あり・無料
トイレ: あり
駐車場: あり(50台)

【投稿時最終訪問 2009年5月】

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